歯に穴があいてしまってズキズキと痛んでいる様子をイメージする方が多いと思います。
まさにその通りです。それも虫歯の一つです。
虫歯には痛みのある虫歯、そして痛みのない虫歯もあります。
そして虫歯になったら削らないといけないと思われている方も多いと思いますが、早い段階で見つければ削らなくても済む場合もあります。
ここでは、
・なぜ虫歯になってしまうのか?
・なぜ痛いのか?
・どのように治すのか?
・そして虫歯の予防方法
についてお伝えしたいと思います。
虫歯の正体とその原因
1−1.口の中はたくさんの細菌が存在するそもそも虫歯とは一体なんでしょうか。お口の中にはたくさんの細菌が存在します。いない人はまずいないでしょう。このお口の中の細菌は歯を磨かないとプラークとなって歯の表面にべっとりとくっついていきます。台所の排水溝も掃除をしないとヌメリが発生します。これと同じ現象がお口の中でも起きています。プラークとなった細菌は食べ物の中の糖質を餌にして酸を作り出します。この酸が歯を溶かして穴をあけてしまいます = これが虫歯です。
1−2.長時間の飲食は虫歯のリスクが高い
食べ物や飲み物を口にするとお口の中はどんどん酸性に傾いていきます。そして食事を終えると唾液の持つ中和作用で中性に戻してくれます。例えば、チョコレートやクッキー、アメ、キャラメルなどは歯にくっついたり長い時間お口に含んでいることでお口の中は虫歯になりやすい状態が長時間続きます。また一日に何回も口にするとその間ずっと歯は虫歯のリスクにさらされています。ジュースやスポーツドリンクを長時間かけて飲み続けるのも危険です。食事やおやつは時間を決め、だらだらと食べないのが重要です。
1−3.虫歯になりやすい場所は3箇所
汚れ(プラーク)や食べカスが溜まりやすい場所が虫歯になりやすい場所です。お口の中で、「歯と歯の間」、「奥歯の溝」、「歯と歯ぐきの境目」の3つは虫歯にとてもなりやすい部位です。これらを意識した食生活と毎日の歯のお手入れをすればグッと虫歯になりにくくなります。
2.虫歯の種類とその痛み
2−1.虫歯の大きさは5段階に分けられる歯の表面はエナメル質という硬い組織で覆われています。口を開けると見える白い部分です。その下に象牙質という組織があり、さらにその一番深い中心に歯髄という歯の神経や毛細血管があります。虫歯がそれらのどこまで進んでいるかによってC0~C4の5段階に分類され、虫歯による痛みの感覚は大きさや段階によって変わってきます。
2−2.[CO] 痛みがない・穴が空いていない虫歯
虫歯というと黒くて穴が開いてしまった状態を想像されるかもしれません。実は、虫歯のなり始めはエナメル質の表面が透明感を失い白くチョークのような色になります。まだ穴も痛みもなく初期う蝕(虫歯)とも言い、この表面的な虫歯の段階ではまだ虫歯の治療の必要はありません。また適切なブラッシングや歯科医院で行う予防処置で進行を抑えられる可能性があります。
2−3.[C1]痛みがない・小さい穴の虫歯
エナメル質に限局した小さな穴があいてしまった虫歯です。痛みを感じることはあまりありません。痛くないのに歯科医院で虫歯と言われた経験のある方もいると思います。表面が少し溶けて黒っぽくなってしまった程度であれば削らずに歯科医院でのクリーニングやフッ素塗布を続けながら経過観察をすることで歯を削るのは避けられます。削った歯は戻ることはありません。ご自身の大切な歯を守るためにも歯科医院での定期的な検診を受けられることをおすすめします。
2−4.[C2] 冷たいもの、甘いものがしみる虫歯
エナメル質の下の象牙質まで虫歯が進んだ状態です。エナメル質は硬い結晶ですが象牙質は水分が多くエナメル質より軟らかい組織です。そのため象牙質の下にある神経(歯髄)へ刺激が伝わりやすくなります。歯の神経は冷たい物や甘い物の刺激に非常に敏感です。その為、象牙質の虫歯は冷たいものや甘い物にしみやすくなります。軟らかい象牙質まで虫歯が進むと速いスピードで進行しやすいため違和感を感じたら早めの治療が必要となります。
2−5.[C3]神経まで進んだ虫歯
虫歯が象牙質の下にある歯の神経まで進むといよいよズキズキと強い痛みが出てきます。虫歯が直接神経を刺激して歯の神経が炎症を起こしている状態です。こうなると夜もぐっすり眠れなくなったり、痛み止めを飲まなければいられない状態になります。この状態になってから歯科医院に来られる方も少なくありません。歯の神経の炎症が大きくなると歯の根の周りにも炎症が広がっていきます。すると、上下の歯を噛み合わせただけで非常に強い痛みを感じることもあります。
2−6.虫歯は神経まで感染させないほうがいい
エナメル質や象牙質で虫歯が留まっている段階であれば虫歯を削って詰め物をして治せますがこのように歯の神経まで虫歯が達してしまうと細菌に感染した歯の神経をとらないと痛みは落ち着きません。 「痛くなってから治療をすればいいですか?」と聞かれることがあります。神経を取ってしまった歯は枯れた木のように弱くなりやすいので神経はできるだけ残しておきたいものです。
2−7.歯の神経が死ぬと痛みは落ち着くが危険
虫歯による炎症が続くと歯の神経は弱って死んでしまいます。すると痛みが落ち着いて治ったような感覚を覚えるかもしれません。しかし、ここで放っておくと虫歯は歯の根の先の方へどんどん進行し、さらに悪くなってしまいます。すると根の周りに膿を作り、大きく腫れてきたり、それによって歯を支えている骨が溶けてしまい歯を抜かなければならなくなることもあります。
2−8.[C4]自覚症状は少ないが一番大きい虫歯
虫歯によって歯のあたまの部分がほとんど溶けてしまい歯の根まで虫歯が進んだ状態です。噛む部分がほとんど残っていないため食べ物もしっかりと噛めません。この段階では歯の神経は死んでしまい痛みが無くなっていることがあります。根っこだけになってしまった歯は残しておくことはできないので抜かなければなりません。虫歯はズキズキと痛みが出るまで放っておかずになるべく小さい内に治すことが、その歯の寿命を延ばすことにもつながってきます。少しでも痛みや違和感を覚えたらひどくなってしまう前に一度、歯科医院で診てもらいましょう。
3.「虫歯の治療」
3−1.治療前には検査と診断が必要
虫歯になってしまった歯は基本的には自然に治ることはありません。しっかりと治療をしなければどんどん悪くなってしまいます。ここではどのような虫歯の治療方法があるのか紹介していきます。また、患者様にとって最良な治療を行うにあたり十分な検査に基づいた診断が必要になります。治療を行う前に虫歯になった歯だけではなく、お口の中全体の検査とレントゲン写真や口腔内写真の撮影、歯周病検査などを行い患者様お一人お一人に合った治療計画を立て治療を行っていきます。
3−2.一度で終わる治療/白いプラスチックの詰め物
前歯や奥歯の側面にできた虫歯に用いる白い樹脂製の詰め物です。虫歯をきれいに削り取ったあと、白い材料を詰め、光を当てると硬化します。この治療方法は一度で終えることができます。しかし、歯の色に近く目立ちにくいのですが金属に比べ強度が弱いため奥歯の噛む面では噛む力に耐えきれず逆に痛みが出やすくなったり欠けてしまうことがあります。また長く使っていると吸水性があるため着色や変色してくることがあり、その場合は詰め替えることもあります。
3−3.奥歯の溝の治療/型を取る詰め物
奥歯の溝は虫歯になりやすい場所の一つです。この噛む力が非常に強くかかる部分や直接口の中で治しづらい歯と歯の間の虫歯治療をする時は、金属やセラミックなどでできたインレーという詰め物をします。これは虫歯をきれいに削り取った後、型どりをして模型上で詰め物を作製します。そのため治療回数は少なくとも2回はかかります。虫歯が神経の近くまで進んでしまっている場合は詰め物をした後もしみたり、逆に痛みが出る時もあります。ほとんどは徐々に落ち着いていきますがあまりにも痛みが強い時は神経の処置を行わなければならないこともあります。
3−4.型を取る詰め物は保険と自費がある
保険の範囲内では安価ですが金属のみとなるので色が目立ってしまいます。自由診療ではご自身の歯に合わせた色調のセラミックで作製するためほとんど目立ちません。またセラミックは体にも優しい材料なのでアレルギーなどの心配もほとんどありません。セラミック製の詰め物の料金は歯科医院によって異なりますが、3万円〜6万円とセラミックの性質によって幅があります。
3−5.時間がかかる歯の神経の治療
虫歯が神経まで達してしまった歯(C3)は歯の神経を取り、歯の根の治療を行います。虫歯になった部分をきれいに削り取り、歯の中の神経をすべて取り除きます。根の治療は一般的に3回前後、そしてしっかりと噛めるように土台を立て被せ物(さし歯)を作るのに2~3回かかります。歯の根の中は非常にせまく先で枝分かれしていることもあるので非常に繊細な治療です。炎症が強かったり、神経が死んで根の先に膿が溜まってしまっている場合などは治療期間が長くかかることがあります。
3−6.土台の次は被せ物が入る
被せ物は金属や樹脂製の土台にすっぽりと被せるものになります。インレーと同じように保険の範囲内では奥歯は金属のクラウン、前歯は金属の表面にレジンという白い樹脂を張り付けた前装冠というものをかぶせます。これらも自由診療ではご自身の歯の色調に合わせたセラミックを用いて作ることができ、よく見える前歯はより自然な見た目になります。セラミック製の被せ物の料金は歯科医院によって異なりますが、7万円〜15万円とセラミックの性質によって幅があります。
3−7.歯の根の治療は中断しないほうがいい
根の治療は治療の回数と期間がかかりますが途中で中断するとさらに悪くなり歯を抜かないといけなくなることがあります。神経をとると歯は急激に弱りやすいので虫歯になってもその前の段階で治療できるように早期発見のための定期検診を行うようにしてください。
3−8.歯を抜いた後の治療
虫歯が歯の根っこまで進んでしまった場合は歯を抜かなければなりません。土台を立てるための歯の量も強度もないので、さし歯にすることは不可能になります。抜いた部位は歯ぐきの傷が治るのをまってからまた噛めるように人工の歯を補わなければなりません。治療をするにはブリッジ、入れ歯、インプラントという3つの方法があります。
3−9.ブリッジと入れ歯
ブリッジはなくなった歯の両隣の歯を削り橋を渡すように3本つながったかぶせ物を装着します。完全に接着するので取り外すことはできません。入れ歯は人工の歯を両隣の歯に針金で引っかけて固定します。これは取り外しが可能です。ブリッジも入れ歯も無くなった歯の噛む力を両隣の歯で負担するのでその歯が弱りやすいという欠点があります。また、義歯ははじめ異物感があり慣れが必要となることがあります。
3−10.人工の歯根/インプラント
インプラントはなくなった歯の部分の骨の中に人工の歯根を埋め込んで噛めるようにする方法です。そのため両隣の歯には負担がかからないので弱ることはありません。非常に優れた治療方法ですが保険適用外なので高額なのが欠点です。インプラントの1本あたりの料金は30万円〜60万円と歯科医院によって大きく異なります。インプラントは体の一部になる臓器にもなりますので、最低限でも「使用するインプラントメーカー」、「十分な設備」、「安全性を考えた事前診断」がしっかり行われているか確認をしておきましょう。
3−11.治療後の歯は虫歯のリスクが高い
詰め物やさし歯で虫歯の治療をした歯はもう虫歯にならないとは限りません。むしろ健康な歯より再び虫歯になりリスクは高くなります。詰め物をするとその境目から虫歯の原因となる細菌が入り込みやすくなります。そして神経を取ってしまった歯は次に虫歯になっても痛みを感じませんので気が付いた時はとても大きな虫歯になっていたということがあります。治療した歯はよりていねいに歯を磨くとともに、歯科医院での定期的なクリーニングや検診が再び虫歯を防ぐために非常に重要です。
4.虫歯の予防
4-1.歯みがきは欠かせない虫歯にならない為に欠かせないのが何と言っても歯みがきです。歯ブラシで歯の表面についたプラークをしっかりとこすり落とすということが非常に重要です。最初にお話した台所のヌメリもゴシゴシとこすらなければきれいになりません。プラークも同じです。また、歯ブラシを毎日頑張っていても自分ではどうしても届かない場所というのがあります。そのような場所は定期的な歯科医院でのクリーニングを行い、正しい歯ブラシの使い方や磨き方のブラッシング指導を受けて、きれいな口腔内を保つことが大事です。
4-2.フッ素入りの歯磨き粉が有効的
歯と歯の間など歯ブラシでは届きにくい所はデンタルフロスや歯間ブラシを用いると大変有効的です。歯みがきの時に使う歯磨剤は今ではそのほとんどにフッ素が入っています。フッ素は歯の再石灰化を促し歯を強くします。フッ素配合の歯磨剤を使用することも虫歯予防に有効的です。またフッ素やクロルヘキシジンといった消毒効果のある洗口剤も虫歯予防だけでなく歯周病予防にも効果的です。
しかし虫歯の第一の予防はやはり歯みがきです。歯磨きが不十分では洗口剤も効果を発揮してくれません。
4−3.子供の歯(乳歯)は虫歯になりやすい
乳歯は永久歯に比べ弱いので非常に虫歯になりやすいです。小さなお子さんは歯磨きも嫌がってなかなかさせてくれない時もありますよね。小さなお子さんがいる親御さんは3ヶ月から半年に一度はお子さんの歯のチェックや歯を強くするためのフッ素塗布をされに歯科医院に来られると安心です。
まとめ
一度虫歯になってしまった歯や削った歯、そして抜いてしまった歯は二度と元に戻りません。まずは虫歯にならないための予防がとても大切です。また、虫歯で大事になる前にかかりつけの歯科医院を見つけ定期的なクリーニングと、虫歯の検診を行っていきましょう。
上前津歯科医院の虫歯治療の特徴
上前津歯科医院では虫歯の悩みについてしっかりとお応えさせていただきます。虫歯治療では審査・診断をしっかりと行い、患者様に合った治療法を用いて治療を行います。